盗撮、本番強要、性感染症、サービス中のケガなど、お客さんとの深刻なトラブルに遭遇したら、みなさんはどうしますか?
風俗のお仕事を検討中の方も、このようなトラブルが起こると思うと不安ですよね。
風テラスには毎日のように、「これって訴えられますか?」というお問い合わせがあります。
それぞれのお問い合わせで聞き取った内容をもとに「訴えることができます」「訴えるのは難しいです」と、一定の回答はできます。
ただ、訴えるというのは「法廷で争うこと」が最終局面ですので、実際に訴えるという手段は、かなりハードルが高いのではないでしょうか。
また、正式に訴訟となると、現在の手続きでは本名を訴状などの裁判書類に明記しなくてはならず、費用や時間を費やす以上の覚悟が必要となってくることも予想されます。
そこで、今回は当事者同士で問題解決する「示談」について解説したいと思います。
スムーズに交渉を進められれば源氏名だけで示談できる場合もありますし、トラブルが起きた時に、「それでは示談にしましょう」と提案することもできます。万が一の時に備えて、ぜひ読んでみてください。
示談とは?
示談とは、裁判所の力を借りずに、当事者同士が話し合うことで金銭の支払いなど一定の条件で合意によって紛争解決を図る行為です。
この話し合いを一般的に「示談交渉」といい、方法は大きく3つあります。
- 当事者同士が直接話し合う(必要に応じて当事者間で書面を取り交わす)
- 当事者同士が直接話し合い、その後に弁護士が示談書を作成する
- 当事者の一方または両方に弁護士がついて交渉を行い、交渉がまとまったところで弁護士が示談書を作成する
もちろん、その場で現金を手渡され、その金額に納得すれば、連絡先を交換したり、示談書を交わしたりしなくでも示談をすることができますが、その場しのぎの対応は、のちのち別のトラブルにつながることも少なくありません。
具体的には、匿名で誹謗中傷を書き込まれたり、心身の後遺症が出ても追加の慰謝料請求ができなかったり、あるいは美人局(つつもたせ)や脅迫行為だったとして逆に刑事告訴されたりする事態が考えられます。
そのため、円満に示談したいのであれば、可能な限り相手の連絡先を把握し、示談書の中に示談金の金額や支払方法、支払期限を明記し、「今後来店したり連絡を取ったりしない」などの具体的な条件を盛り込むなどして、書面で合意することをおすすめします。
示談交渉のはじめ方
トラブルの発生直後、とても混乱した状況かと思いますが、相手から連絡先を聞き出してください。
風俗という仕事柄、客もキャストも匿名性が高く、その場で電話番号や住所、本名などを確認できなければ、逃げられてしまう可能性が非常に高いからです。
ただ、盗撮や本番強要などの違法行為は、客側も警察沙汰になることをおそれて、とんでもない行動に出ないとも限りません。2人きりになるホテルなどの密室ではなく、店舗スタッフや警察が到着した場で連絡先を聞き出せると安全ですね。
免許証などの身分証は裏面も見せてもらい(住所などが変わっていることもあるため)、教えてもらった番号に電話してつながるかその場で確認したうえで(うその電話番号を教えられることもあるため)、「のちほど連絡します」と伝えて、気持ちが落ち着いたら、さきほどの3つのどの方法で交渉を行うか検討していきましょう。
当事者同士が直接話し合う(必要に応じて書面を取り交わす)
一番手軽ですが、自分で直接相手に連絡する必要があり、示談書の内容も自分で検討しなければいけません。また、金銭の受け取りの際、直接会って手渡しで現金を受け取るか、相手に振込口座を教える必要があります(振込先が自分名義の口座だと相手に本名がバレてしまいます)。
ただ、相手が文句をつけなければ、「源氏名」だけを記載した示談書で合意することも可能です。金銭の受け渡しの際は、友人などに同行してもらえば、個人情報を必要最小限に抑えて示談を成立させることもできる可能性もありそうです。「示談書 テンプレート」でネット検索すると、書面のひな型や書式がたくさん出てくるので、どのような項目が必要なのか調べられます。
当事者同士で直接話し合い、弁護士が示談書を作成する
交渉は自分で行い、相手と合意した内容を弁護士に依頼して示談書にしてもらうパターンです 。当事者同士で示談書を作成する場合にありがちな形式的なミスを回避することができます。示談書を弁護士が作成する以外は1と同じなので、相手から文句がなければ源氏名で示談を進めることも可能です。
この場合、一般的に5万~15万円程度の費用がかかりますが、法律のプロが書面を作成してくれたということで各段に安心感が上がります。ただ、万が一、相手との交渉がうまくいかなかったり支払いがされなかったりした場合に、交渉まで弁護士に依頼する場合は追加費用がかかるので、その点はきちんと考えて相談しましょう。
弁護士が交渉代理と示談書を作成する
交渉段階から弁護士に依頼すると、着手金や成功報酬、実費として10万~数十万円ほどの費用がかかります。金額に幅があるのは、収入が低い場合に利用できる法テラスを利用した場合と利用しなかった場合をすべて含んでいるためです。
自分が依頼する弁護士には本名を伝える必要がありますが、相手との示談交渉は本名や住所を出さずに源氏名のみで進めることも可能な場合があります。源氏名のみで交渉をしたい場合は、依頼する弁護士に「本名を相手に知られたくない」という希望を伝えて、交渉の進め方について弁護士と相談してみてください。
自分が脅迫の加害者になってしまうケースも
また、これだけ手間をかけて示談交渉するとなると、慰謝料をできるだけたくさん要求したい気持ちになることもあると思います。風テラスにも、「いくらまで取れますか?」と聞いてくる方もいらっしゃいます。
しかし、慰謝料は、事案に応じてケース・バイ・ケースで決まることが多く、「相場」はあってないようなもの。
とはいえ、相手がそれなりに常識的・合理的な金額を提案しているにもかかわらず、法外な金額を要求した挙げ句、「払わないなら警察に通報する」「家族にばらされてもいいの?」「SNSにさらします」などと脅してしまうと、アウトです!!
また、そんなつもりはまったくなかったのに、反省のない相手の言動にカっときて、気が付いたら自分の口から脅し文句が出ていたということも十分ありえます。
あるいは、店側がキャストに寄り添って強気の交渉をしてくれていると思ったら、美人局(つつもたせ)の共犯者として逆に逮捕されてしまったという顛末もありえるのです。
このように誤った交渉を絶対に避けるためにも、弁護士に相談すること、交渉を代理してもらうことは常に選択肢に入れておいてほしいです。
さいごに
示談は、、、面倒くさいですよね。相手と連絡を取るのも、示談書を作るのも、きちんと安全な手続きを踏むのであれば手間と気力がかかります。
ただ、もし、「こんな仕事をしているからしょうがない」と鬱々とするのであれば、思い切って示談を提案する、弁護士に相談するのはアリだと思います。
被害を受ける前の状態に戻ることはできませんが、示談によって謝罪や金銭を受け取ることで、トラブルに一定の区切りをつけられるからです。
また、スムーズに交渉を進められず、名前や住所がわからないケースであっても、弁護士は「どうやったら交渉を進められるのか?」「どうやったら相手を特定できるか?」というところから、相談者と一緒に検討してくれます。風テラスでも弁護士の無料相談会を開催していますので、遠慮なくお問い合わせください。
風テラスの豆知識
相手の住所がわからなくても、SNSのDM機能やLINE、メールを使って、書面データを送受信することで示談することができる場合もあります。スマホに保存したPDFや画像は、コンビニで印刷することができるので、パソコンやプリンターを持っていない、友人宅に居候中といった状況でも、書面データをやり取りすることができます。ただし、相手からブロックされたり相手がアカウントを削除してしまうと、そこで交渉がストップしてしまうというリスクもがあります。