最終更新日:2026年8月26日

読み終えた瞬間、魂が震えたと……そう感じました。
『聖と性 私のほんとうの話』は、日本一の風俗嬢と称されるまりてんさんの数奇な半生を綴った自伝です。今や誰よりも有名な「女の子」となったまりてんさんですが、この本に書かれているのは、売れっ子嬢の接客いろはや、技術のことではありません。
それでも、この本は業界の女の子にも手に取ってみてほしいと思いました。仕事に対して圧倒的なプロ意識を持てる女の子の“執着”は、一体どこから来ているのか、どんな原動力に突き動かされているのか……その熱源を知ることは、きっとあなた自身を振り返ったり、目標を持ち続けるきっかけになると思うからです。
長く愛される女の子が「生まれた理由」が分かる本

この業界で長く活躍しているまりてんさん。最近業界に入った人からすると、まりてんさんのことを「風俗系Youtuber」として認識している人も多いかもしれません。しかし実際、まりてんさんは今から10年以上も前からこの業界で活躍し続けています。
本は、まりてんさんの「半生記」という体裁で仕立ててあります。この世界で働く女の子の中には、何かしら人生における苦しみや歪みを抱えている子も少なくはないと思いますが、まりてんさんも自身の中に耐え難い矛盾を抱えていた人だということが、本を読むと分かると思います。
宗教2世として育ち、教義によって厳しく行動を制限された幼少期の苦悩。極端に清廉潔白であることを求められた結果、男性と身体を重ねることそのものに開放感を覚えてしまった学生時代。そして、20代で池袋のデリヘル店を経営するも過酷な環境から自殺未遂に至った挫折。そこからの再起を経て、全国の風俗嬢の頂点「ミスヘブン」に輝くまでの道のりが描かれています。
そもそも、業界では長く働くことそのものが難しいと思っている人が多い中、10年以上活躍し続けているまりてんさんの歩みそのものが、気になる人も多いと思います。そして、実際まりてんさんのキャリアは単純ではなく、紆余曲折の後、キャストとしてのキャリアのかなり後半にミスヘヴンに挑戦されていることも面白いポイントです。
この業界では、なかなか「続ける目標」を見出しづらいという子も多いと思います。稼ぐお金という目標は分かりやすいけど、それだけでは続けづらいと思う子も多い。だからこそ、お金以外の部分に執着できる人のいち視点は、多くの女の子にとってかなり新鮮に感じられるのではないかと思いました。
生き様に散りばめられた人気嬢の集客テクニック
全体はまりてんさんの経験してきたことを追想していく流れですが、実際には女の子にとって参考になる「マインド論」や「経営脳」などが分かるページも散りばめられています。
まりてんさんは風俗業を単なる肉体的なサービスではなく、孤独な現代人の心に寄り添う「心の接客」と定義します。矛盾を抱えながら生きる人間本来の姿を肯定し、過酷な現実を独自の哲学で乗り越えてきた彼女の生き様は、生きづらさを感じる現代人に強いメッセージを投げかけています。
境遇が特殊だったとはいえ、まりてんさんの男性との関係の作り方はとても参考になるところがあります。人の心に入り込むということがどういうことなのか、本書を読むと分かるはずです。そもそも「お客様の人間性には興味が持てない、だってお客様でしかないので」という意見もよく聞きますが、まりてんさんは「男性それぞれの人間性に対する興味」とはちょっと違うところに執着を持っているように思えます。興味を持つ、と一言に言っても、恋愛のような興味の持ち方をする必要があるわけではないのです。まりてんさんはある種、自分自身の欲求を満たすために男性に深く踏み込んでおり、これがまた、なかなかやる人がいなそうというか、男性にとってもきっと新鮮なんだろうなあと思いました。
男性との行為一つとっても「はいはい、発射して満たしてあげればいいんでしょ」という考え方とは全く違う捉え方をされていることも、本を読むと分かると思います。この業界ではサービス内容の一つでもある「寝る」という行為は、まりてんさんにとってはお客様の心を開いてあげる過程にある行為の一つでしかないようです。
さらにまりてんさんは自店立ち上げの経験もある経営者でもあるので、店舗で打ってきたイベントや、予約の取り方一つにも、現場を知る女性経営者ならではの遊び心を感じます。店舗に所属している女の子だと、イベント内容をまるまる真似するのは難しいかもしれませんが、お客様を飽きさせない工夫の部分や、SNS発信との絡め方などは、雇われる側の女の子にとっても参考になる部分もあるでしょう。
やっぱりきっと、この業界「外見だけ」ではない

本の中で、まりてんさんが自身のことを「絶世の美女じゃないし、キャパも狭い」と評していたのも印象的でした。講習イベントでも聞いたことがあるのですが、実はまりてんさんは口内発射など、NGが少なくはない女の子だったよう。エロの才能があるわけではない、そして外見で選ばれていたわけでもない、じゃあ彼女の人気の秘密は、どこだったのか……。人への関心の持ち方や、お客様に負担を与えない真心接客など、本書を読むことでまりてんさんが実際に行っていた「人と違うやり方」を追うことができるでしょう。
しかし、私がこの本を読んで最も感銘を受けたのは、風俗という仕事の「捉え方」が、人とは全く違うのではないかという部分でした。エロいことが好きだから働くわけでもなく、ものすごくお金に執着しているわけでもない。まりてんさんはみなさんが想像するような「好き」や「得意」をベースにこのお仕事を続けてきたわけではないのではないかと思いました。ただ、そうではないからこそ、一般の仕事と変わらないくらい、プロの仕事人として、この世界に向き合っている、そう思いました。
この世界にいるときっと、お客様も女の子も、どうしても「仕事とプライベートの境目」が分からなくなると思います。それをまりてんさんは、お客様への敬意だとか、この仕事そのものへの愛だとかで、しっかりと線引きしているように思えました。
ここでの仕事は、執着できるポイントはけっこうたくさんあると思います。お金もそうですし、働き方の自由度、SNSや接客で男性にちやほやされるとか。執着がなければいつか飽きがくるでしょうが、その執着ポイントは人それぞれでいいんだと思います。まりてんさんは執着するだけではなく、線引きをすることでお客様と近づきすぎないよう、距離感を適切に保っていたのではないかと思いました。
この本で読めるのは、他の人とは全く違う、この世界とまりてんさんとのストーリー。この世界でここまで頑張っている女の子がいる、そう知ることができるだけでも、きっと明日働く勇気をもらえるはず。業界のトップを知ることは、この世界で働くどんな女の子にとっても大切なことです。まだ読んでいない人は、ぜひ本を手に取ってみてくださいね!