最終更新日:2025年6月23日
たくさんの現役風俗嬢さんにインタビューしてきた中で「風俗を辞めたいけど、辞めた後に何をしたらいいのかわからない」「辞められても業界に戻ってしまいそうで不安」という声を聞くことが多かった。
風俗に限らず転職やセカンドキャリアに進むことは簡単なことではない。
今回は、元風俗嬢で現在電気屋の正社員とした働く樹里さん(31歳・仮名)に話を聞かせてもらった。彼女は「ただの正社員な私の話が参考になるのか」と謙遜するが、風俗を辞めてから1度も業界に戻っていない。
そもそも樹里さんが風俗の仕事を始めたキッカケは「趣味のため」だという。
推し活のためのパパ活が面倒くさくて風俗店へ
「私は男性アイドルの追っかけをしたり、アニメのオタクだったり多趣味なんです。CDとか漫画を買う程度なら別に普通の仕事でできますが、推しバンドのツアーがあったら全国回りたいし、アニメも漫画だけでなくグッズ全部買いたい。だから風俗の仕事をするようになりました」
いきなり風俗の仕事をすることに抵抗はなかったんだろうか?
「最初はパパ活をしていたんです。アプリでパパを見つけてたんですが、ちょっと面倒くさくて(苦笑)。学校とファーストフードのバイトと推し活の合間にパパ活は厳しい。結局、パパの都合に合わせなければいけないから。だったらちゃんと店舗で働いた方がいいかなって」
樹里さんが見つけた店は地元の箱型ヘルス。
「自分の空いた時間にシフトを出せるので楽でした。けど、身バレしたので3ヶ月くらいで辞めたかな」
HP上では顔を出していなかったが、お店に行けば顔写真が見れるようになっていたそうで、ファーストフード店の上司に「樹里ちゃん、風俗でも働いてない?」と聞かれたんだとか。
「げ!って感じでした。田舎だから人間関係が狭いし、実家暮らしだったから、親の耳に入ったら嫌だから、風俗も昼のバイトも全部やめて上京することにしました」
上京し選んだ店は、西東京のデリバリーヘルスだった。樹里さんはこの店を移ることなく5年在籍し風俗を卒業してから1度も業界に戻っていない。
現役時代は「時代も良かったし、月100万円以上稼いでいました」というが「1年目は暇でした」と笑う。
「店自体は忙しかったからフリーは多かったけど、私は指名もほとんどなかったです。1日1万円しか稼げない日も多かった」
だが2年目から店を辞めるまでは「超安泰でしたね」という。2年目から確変が起きた理由はなんんだったんだろうか?
「スーパーマメだからです!お客さんに全員お礼メールしたし、日記もこまめに書いたし。お客さんの接客メモは必ず書いていました。だからいつ誰がきても情報と前の記憶はバッチリ。1年目の時に腐らずやっていたことが2年目で花開いて、辞めるまでありがたいことにずっと忙しくさせてもらってました」
稼ぎも良く、趣味にもお金を使えて毎日充実していた樹里さんだったが、風俗を辞めたのは26歳の時。
「従業員に『結婚を前提に付き合ってください』とプロポーズされて、まぁいい奴だったし付き合うことにしたんです。そしたら『お前、いつまで風俗やってるんだ!』と詰められて(笑)。同棲をスタートするタイミングで完全に上がるように言われました」
そこで樹里さんは婚約者に条件を出した。それは「半年間だけ働かせてくれ!」というものだった。
「仕事自体は好きだったし、いきなりは寂しいなっていうのもあった。元々、お給料全て使い切るタイプではなかったけど、そこまで意識して貯金をしてなかったので、この半年で貯めるだけ貯めてやめるぞ!って」
半年間で貯めた額はなんと500万円を少し超えたくらいだったというからすごい。
「同棲を始めたら、彼が全ての生活費やお小遣いを出してくれることにはなっていたんですが、500万円貯めたことで、心の余裕が出来ました」
これにてハッピーエンド♡かと思いきや、同棲と婚約は半年で解消することになってしまう。
婚約破棄でも風俗に戻らなかったワケ
「シンプルに一緒に住んだら嫌なやつだったんです(笑)。付き合ってる時は、私にも私の飼ってるペットにも優しかったのに、一緒に暮らした途端に『犬をお前の部屋から出すな!』『俺が家賃を払っている家に友達を呼ぶな!』『養ってやってんだろ!』みたいな超モラハラ野郎になっちゃって」
とはいえ、新宿のタワーマンションに住み、潤沢な生活費と余った金額をお小遣いにしていいという条件はなかなか捨て難くはなかったんだろうか。
「他にも私の作ったご飯を食べないとか、友達とも遊ばせてくれないし、全然楽しくなかった。タワマンといっても私の部屋が6畳で、毎日そこでペットとゴロゴロだけする生活は窮屈すぎました」
樹里さんは別れを決意。婚約者は最後の最後まで引き留めてきたというが、最終的に「勝手に引っ越し先を決めて勝手に出て行きました」と話す。
「最後に貯めた500万円があったから引っ越せました。お金がなかったら、嫌でもあの生活を続けなければいけなかったかもしれない」
新宿のタワーマンションを出て、引っ越した先は世田谷区の1LDKのマンションだった。家賃は11万円。
「本当は6万円くらいが良かったけど、犬と一緒にすめてセキュリティがいいところだとまぁこれくらいになっちゃいますよね」
そして元々電化製品が大好きだったこともあり、大手の電気屋に就職した。派遣で入り、のちに頑張りが認められ正社員となったそうだが、月給は手取りで27万円前後。昼職としては良い方かもしれないが、月に3桁稼いでいた樹里さんからしたら物足りなくはなかったんだろうか?
「そうですね。まぁ少ないですよね。でも風俗に戻るつもりは一切なかったんです」
婚約破棄をしてから職探しの期間に、風俗の求人すら見ていないと当時を振り返る。
「だって、1回辞めたのに戻るのってダサいじゃないですか。少しだけ、電気屋でバイトをして空いた時間に風俗っていうのもありかな?なんて思いましたが、それだと一生ズルズルやめれなそうだから、もう戻らない!って改めて決意したというか」
だが現実問題、月収が前の4分の1以下になって、生活するのは難しいようにも思える。
「そうですね。正直何も考えないで生活していたら、すぐ貯金が底をついてしまうと思います。だから私は別れを決めたあたりから、お金のリハビリを始めました。まず、月に生活するために最低限いくら必要なのか?を知ることです。食費がこれくらい、友達とたまに飲みに行ったらこれくらい、ペットにかかるのはこれくらい、光熱費や通信費とか。それで出た金額を元に、いくら稼げば足りるのか?を計算するんです」
現役時代も毎日の収支はつけていたそうだが「支出に関してはわかっていませんでした」という。
「稼ぎはお客さんメモに書いていたんですが、支出は全く気にしていませんでした。昼職の子に普通に奢っていたり、推しの全国ツアーを夜行バスとか使わず回ったり、ブランド物はそんなに興味がなかったけど、1万円程度の服は値段気にせず買っていました。それでも余ったお金を貯金していたから、気にしていませんでしたが、収入が減るわけだから、そこはキチンと把握しなければいけないから」
そうはいってもいきなり生活水準を下げることは難しい。樹里さんは「だから貯金が大事なんです」と強くいう。
「月収27万円家賃11万円、残り16万円で生活するのはすぐにはもちろん無理。貯金を切り崩しながら、50万円の暮らし→47万円の暮らし→45万円の暮らし→40万円の暮らしっていう風に徐々に徐々に慣らして行きました。少しずつ少しづつ一般の感覚に慣らして行きました」
風俗時代の友人もいたが「もう働いてないから豪華な遊びは出来ない」とはっきり話したり、昼職の友人を作ったことも「リハビリには良かった」と話す。
「自分的に今の家に5年住めたらいいなって思って、今年で10年目。500万円あった貯金は250万円になったけど、そこから減ることはありません。増えることもないけど(笑)。この10年の間に前ほどライブに行かなくなったり、オタクグッズも本当に欲しいものしか買わなくなったり、選択してお金を使うようになりました。リハビリの効果なのか我慢して買ってないというわけでもないのでストレスもないですよ」
風俗に戻らないために必要な事
今現状、風俗を辞めたい人、辞めても戻らないでいられるか不安な人に対しては「とにかく貯金とリハビリです」と強くいう。
「辞めると決めたなら、結婚だろうとなんだろうと500万円、いや200万円だけでも貯めたほうがいい。友人の風俗嬢も結婚を期にやめましたが、貯金がゼロだったから『別れたくても別れられない』と嘆いていました。風俗をやめた子が口々にいうのは『もっと貯金すれば良かった』です。貯金さえあれば、私のように婚約破棄になっても、自らの意志で引っ越したり、人生をリスタートできる。金銭感覚を治せたのも貯金があったからです。貯金をしつつ、自分の最低支出をちゃんと出して、一体いくらあれば普通に暮らせるか?を知ることがスタートです」
また現役時代から樹里さんが念頭に置いていたことがとても興味深かかった。それはー。
「働いたら、当日お金をくれるのが風俗のメリットだけど、ある意味デメリットでもある。お金を使い切っても、翌日出勤したら何とかなっちゃう。毎日『明日誰も来ないかもしれない』『来月無収入になるかもしれない』という危機感を持って働いていました」
また就職先については「稼げる仕事よりも自分の好きな仕事を選んだこともよかった」そうだ。
「正直、営業とかもっと昼職でも月収がいい仕事は沢山あったけど、好きじゃないと続かなかったと思う。好きな仕事だとストレスも少ないし、頑張っていたら少しだけど給料も上がるし、お金だけを追い求めない方がいいと思います」
『自身の収入と支出を知る』
『お金の使い方のリハビリをする』
『極端には生活水準を下げない』
『貯金をしておく』
樹里さんは「私がやったのはこの4つだけ。全部を一気にやるのはきついかもしれないので、どれか一つでも実践してみることで、卒業が近づいても怖くなくなるかもしれません」と微笑んでいた。
地元で箱ヘルデビュー。上京後デリヘルに5年在籍し風俗を卒業してから1度も業界に戻っていない。現在は好きな仕事を昼職に選んで生活している。
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